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「校正」と「トレーサビリティ」について

A.

計測器における「校正」とは、計測で指示された値と標準によって実現される値を特定の条件化で確定する一連の作業を意味します。「トレーサビリティ」とあわせて語られることが多く、いずれもJIS等で明確に定義されています。

計測機器の性能評価のために欠かせない「校正」と「トレーサビリティ」についてご説明します。

「校正」という用語

「校正」という用語について、JIS Z 8103-2000『計測用語』には、以下のように定義されています。

用語 定義 対応英語対応英語
校正 計器又は測定系の示す値、若しくは実量器又は標準物質の表す値と、標準によって実現される値との間の関係を確定する一連の作業。備考:校正には、計器を調整して誤差を修正することは含まない。 calibration

独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センターが、2007年5月に翻訳版を出した『計量学早わかり(改訂第2版)』(原書は、EUROMET-欧州計量協力機構-から発行された'Metrology in Short')にも、用語集に「Calibration:校正。計器又は測定システムによって指示される量の値、若しくは、実量器又は標準物質によって表される値と、標準によって実現される対応する値との間の関係を、特定の条件下で確定する一連の作業」と載っており、JIS用語とほぼ同じ内容です。

もともと「校正」というのは、「文字の誤りをくらべ正すこと/校正刷を原稿と引き合せて、文字の誤りや不備を調べ正すこと」を表す言葉でした。広辞苑を調べると、「較正」という語もあって、「実験に先立って測定器の狂い・精度を基準量を用いて正すこと」とあります。つまり、計測用語としての「校正」は本来誤用だったわけですね。 しかし、今ではJISの用語にも正式に掲載されているわけで、「校正」は立派な計測用語として通用するようになっています。 但し、中には「校正」を使うのを嫌って頑固に「較正」を使っている業界などもあります。

「トレーサビリティ」という用語

次に「トレーサビリティ」ですが、同じくJIS Z 8103-2000『計測用語』には以下のように定義されています。

用語 定義 対応英語
トレーサビリティ 不確かさがすべて表記された切れ目のない比較の連鎖によって、決められた基準に結びつけられ得る測定結果又は標準の値の性質。基準は通常、国家標準又は国際標準である。 traceability

とあり、『計量学早わかり』用語集も同等の内容です。

「トレーサビリティ」という言葉も、「食品のトレーサビリティ」に代表されるように、世間一般では少し違った意味で使われています。農林水産省では、「生産、加工及び流通の特定の一つまたは複数の段階を通じて、食品の移動を把握できること」と定義付けています。ここでは、あくまで履歴の追跡性という意味であって、正当な標準への関連付けという意味はありません。
ちなみに、ISO9001での「トレーサビリティ」も「履歴」の方の意味です。(ISO9000-2005『品質マネジメントシステム-基本及び用語』の注記には、別の意味があることが示されていますが)

上記のことから考えると、「校正」と「トレーサビリティ」は、2つがセットとなることで計測・計量用語として成り立つ、ということでしょうか。

前述の製品評価技術基盤機構認定センター発行の『IAJapan測定のトレーサビリティに関する方針』には、測定のトレーサビリティに関する基本方針として、「IAJapanに登録された試験事業者・校正事業者並びに標準物質生産者は、その登録範囲で使用する設備・装置のうち、試験・校正等の結果の正確さ若しくは有効性に重大な影響を与えるものについては確立された校正計画をもち、適切な校正を実施することにより国際単位系(SI)への測定のトレーサビリティを確保すること。

ただし、そのようなSIへのトレーサビリティが技術的に不可能又は妥当でない場合には、認定された(若しくはその他の手段によって能力があると認められる)標準物質生産者によって供給される認証標準物質(CRM)、又は試験事業者・校正事業者、顧客及びその他の関係者のすべての当事者の間で明確に記述され合意された特定の方法や合意標準を用いて測定のトレーサビリティ確保に努めること」としています。

独立行政法人産業技術総合研究所をはじめとする計量標準供給機関では、計量標準の空白分野が埋められるように日々研究・開発・整備を進めており、関連して計量法に基づいて立ち上げられたJCSS(Japan Calibration Service System)による計量標準供給制度も次第に拡充しつつあるわけですが、産業界の開発スピードになかなか追いついていけないのが実情のようです。

しかし、「校正」という以上、仮に国家標準まで辿り着くことができない場合でも、少なくとも一般的に認知された標準に結び付けられる「トレーサビリティ」は必要といえます。


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