超音波探傷試験(UT)とは?測定原理や仕組み、種類と選び方について解説
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超音波探傷試験(UT:Ultrasonic Testing)は、材料や構造物を壊さずに内部のきず(欠陥)を検出する代表的な非破壊検査です。きずで反射して戻ってくる超音波の強さと、戻ってくるまでの時間(距離)を手がかりに、きずの位置・大きさを推定します。
本記事では、超音波探傷試験の基礎知識から、測定原理や仕組み、種類と選び方についてを、初心者の方にもわかりやすく解説します。
- 超音波探傷試験(UT)の基礎と特長:超音波を用いて内部欠陥を非破壊で検出するUTの仕組みと、外観検査では得られない価値を解説します。
- 超音波探傷の測定原理と波形の考え方:反射エコーの位置や高さから、きずの深さ・大きさを読み取る基本原理と注意点を整理します。
- 超音波探傷器の種類と使い分け:手動型探傷器とフェーズドアレイ探傷器(PAUT)の違い、それぞれの強みと適した用途を解説します。
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失敗しない超音波探傷機の選び方:検査対象・結果の活用方法・現場環境を踏まえた、実務視点での機器選定ポイントを紹介します。
超音波探傷試験とは
超音波探傷試験(UT)とは、対象物内部に、人間の耳には聞こえない高い周波数の音(超音波)を送り込み、きずや境界で反射するエコーを解析して内部状態を評価する検査手法です。
超音波探傷試験は、外から見えない内部の割れ・未溶着・介在物・減肉などを、部材を壊さずに把握できる点が強みです。外観検査では分からない不具合を早期に見つけられるため、製造品質の保証や事故防止の要として使われます。
基本は探触子(プローブ)から超音波を入れ、戻ってきた反射波を探傷器で表示し、反射の位置と高さから内部の状態を読み解きます。表示は波形(Aスコープ)が中心で、条件設定や読み取りの正しさが結果を左右します。
一方で、超音波探傷試験は万能ではありません。材料の性質や形状、欠陥の向きによって、検出しやすさが大きく変わります。だからこそ、対象に合った方式選定と、校正や走査の丁寧さが精度を決める重要ポイントになります。
超音波探傷試験が行われる場面
超音波探傷試験(UT)は、配管・圧力容器・タンク・橋梁などの鋼構造物で、溶接部や母材の内部欠陥確認に広く用いられます。
主に以下のようなシーンで活用されています。
- 溶接部の検査: 橋梁、ビル、プラント配管などの溶接内部に割れや溶込み不良がないかの確認。
- 素材の品質検査: 鋼板や鋳造品の中に空洞(ブローホール)や不純物がないかのチェック。
- 保守点検: 稼働中の設備(ボルトや車軸など)に疲労亀裂が発生していないかの調査。
超音波探傷試験(UT)が適用しやすいのは、超音波が安定して伝わる材料や、表面から探触子を当てられる形状です。鋼やアルミなどの金属は比較的適用しやすい一方、鋳造品や粗粒材、オーステナイト系ステンレスなどは散乱が増えてノイズが出やすく、検出や評価が難しくなることがあります。材料特性を知らずに実施すると、きずが見えないのに安全と誤判断するリスクがあるため、事前の適用判断が重要です。
超音波探傷の原理と仕組み
超音波は、材質が変わる境界(例:金属と空気の空洞、金属と介在物、母材と溶接欠陥)で一部が反射します。反射までの時間から距離を求められる性質を利用して、きずの位置や大きさを推定します。
- 発信: 「探触子(プローブ)」というセンサーを対象物に当て、超音波を発信します。
- 伝播: 超音波は金属などの材料内部を直進します。
- 反射: 内部にきずがあったり、材料の底面(裏側)に到達したりすると、超音波はそこで反射して戻ってきます。
- 表示: 戻ってきた反射波(エコー)を装置が捉え、モニターに「波形」として表示します。
超音波探傷の波形の違い
探触子(プローブ)から送信された超音波は、材料内部を伝播し、反対側の面(底面)で反射して戻ってきます。モニターには、探触子から超音波が発信されたことを示す「送信パルス(T)」と、底面で反射して戻ってきた「底面エコー(B)」の2つの波形が表示されます。TとBの間には何も波形が現れません。
材料内部にきず(割れや空洞など)があると、超音波はそのきずで反射します。その結果、送信パルス(T)と底面エコー(B)の間に、きずからの反射波である「きずエコー(F)」が表示されます。きずで超音波の一部が反射されるため、底面エコーの高さは正常な場合よりも低くなることがあります。
きずの大きさは、きずエコー(F)の高さ(振幅)で判断できます。きずが大きいほど、より多くの超音波が反射されるため、モニター上のきずエコーは高くなります。逆に、きずで反射される超音波が増えるため、底面エコー(B)はさらに小さくなります。
きずの位置(深さ)は、送信パルス(T)からきずエコー(F)までの時間(横軸上の距離)で判断できます。きずが探触子に近い(浅い位置にある)ほど、超音波が往復する時間が短くなるため、きずエコーは送信パルス(T)に近い位置(左側)に表示されます。
超音波探傷では、きずの大きさをきずエコー(F)の高さ(振幅)から推定しますが、「エコーが高い=きずが大きい」と単純に判断することは適切ではありません。超音波は、きずの向きや形状によって反射のされ方が大きく変わります。 たとえば、欠陥面が超音波の進行方向に対して傾いている場合、反射が探触子に戻りにくく、実際よりも小さなエコーとして表示されることがあります。 一方で、コーナー部や溶接ルート部などの形状反射によって、実際にはきずがなくても、きずのようなエコーが現れることもあります。
そのため、超音波探傷試験(UT)では、
- きずに対してできるだけ直角に超音波を入射させる探触子条件の工夫
- 複数方向からの再走査によるエコー挙動の確認
- 感度線(DAC/TCG)を用いた相対的なエコー評価
といった方法を組み合わせることで、きずの有無や大きさの判断精度を高めます。
超音波探傷器の種類
大きく分けて以下の2つのタイプが使い分けられています。
手動型超音波探傷器
手動型超音波探傷器は、最も一般的に使用されているポータブルタイプの探傷器です。検査員が探触子を手に持ち、対象物を手動で走査しながら検査を行います。装置は軽量かつコンパクトで、狭い場所や高所など、作業環境の制約を受けやすい現場にも適しています。
手動型は、一般的なパルス反射法の探傷器を用い、Aスコープ(波形表示)でエコーの位置と高さを見て判断する方式です。装置が比較的コンパクトで持ち運びやすく、現場の溶接部検査や部材検査で広く使われています。
運用の流れは、標準試験片で距離と感度を合わせ、ゲートを設定し、走査しながら欠陥エコーの有無と高さを確認する形が基本です。必要に応じて探触子を変えたり、走査方向を変えて、エコーの再現性や最大値条件を探します。
注意点は、波形の解釈が技能者の経験に依存しやすいことです。例えば、余盛形状や開先形状による反射、表面状態によるノイズをきずと誤認することがあります。逆に、きずの向きが悪いとエコーが立たず見落としにつながるため、手動型ほど手順化と訓練が重要になります。
フェーズドアレイ探傷器
フェーズドアレイ探傷器は、複数の振動子(素子)を配列した専用の探触子を用い、各素子を電子的に制御することで、超音波ビームの屈折角を変化させたり、焦点位置を自在に調整したりできる高度な超音波探傷器です。これにより、超音波ビームを扇状に走査したり、特定の深さに集束させた検査が可能になります。
フェーズドアレイ超音波探傷(PAUT)では、こうしたビーム制御の特性を活かし、リニアスキャン(直線的な走査)や、セクタースキャン(角度を振りながら行う扇状走査)など、目的に応じた走査方式を設定できます。取得した複数角度・複数焦点の反射データを合成することで、被検体内部を断面画像としてリアルタイムに表示できる点が大きな特長です。このため、従来のAスコープ波形のみを用いた評価と比べ、きずの位置や形状を視覚的に把握しやすく、説明性・記録性・検査効率が大幅に向上します。検査範囲を漏れなくカバーしたい場合や、検査結果を第三者が後から追跡・確認できる形で残したい場合に特に有効な手法です。
一方で、設定自由度が高いという特性は、条件設計の難しさにも直結します。
例えば、角度範囲や焦点位置がきずに適合していない、校正不良によって位置表示がずれる、エンコーダ設定の不備により画像が歪むといった要因は、見落としや誤判定につながる可能性があります。そのため、導入時には適用規格の整理、検査手順の標準化、技術者教育をセットで整備することが、フェーズドアレイ超音波探傷(PAUT)を有効に活用するための重要なポイントとなります。
超音波探傷器の選び方について
超音波探傷器を選定する際は、次のポイントを整理すると分かりやすくなります。
- 板材・鍛造材の内部欠陥 → 垂直探傷
- 溶接部 → 斜角探傷・フェーズドアレイ超音波探傷(PAUT)
- 配管の腐食・減肉 → 厚さ測定・腐食マッピング
- 現場で判断するだけ → Aスコープ表示を中心とした機器
- 報告書や記録が必要 → 画像表示・データ保存に対応した機器
- 使用する探触子や適用規格に対応しているか
- 防塵・防滴性能など、現場環境に適しているか
超音波探傷試験の測定方法と資格についてや、よくある質問や失敗防止策については、別ページで詳しくまとめています。
より詳しく知りたい方など、ぜひあわせてご覧ください。
超音波探傷器レンタルをお探しの方へ、実際に測定を行いたい方には、用途に合わせて選べる「超音波探傷器レンタル」のラインアップもご用意しています。
機種比較や用途別の選び方もわかりやすくまとめていますので、ぜひご覧ください。
