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表面粗さの記号の意味は?JISでの基準などをわかりやすく解説

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この記事でわかること

この記事は、「図面の粗さ記号を正しく読みたい方へ」おすすめです。
製品の品質を左右する重要な要素の一つである「表面粗さ」。設計図面でよく目にする記号ですが、具体的に何を意味するのか、どのように測定するのか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、表面粗さの記号の意味や、JIS規格による基準について解説します。最後にはレンタルできる粗さ計の情報もご紹介します。初めての方でもわかりやすく、専門的な内容を解説します。

表面粗さの記号・パラメータが表す意味

表面粗さを数値で示すときに用いる代表的な記号やパラメータを、現行JISの内容を中心にわかりやすく整理していきます。

表面粗さを定量化するために用いられるパラメータはいくつか存在し、それぞれ計測や評価の仕方に特徴があります。代表的なものとしてはRaやRzなどが挙げられ、図面上や製品の仕様書で指定されることが多いです。

パラメータによって注目するポイントが異なり、平均的な凹凸を重視するものから、最大の山谷差を重視するものまでさまざまです。どのパラメータを採用するかは製品の用途や機能に合わせて選定されます。

また、旧JISでの三角記号による表記も残されており、特に古い図面や一部の慣習的な工場などでは今でも使用されることがあります。新規格への移行が進む一方で、現場によっては複数の表記方法が混在するため、正しく読み取るための基礎知識が欠かせません。

Ra(アールエー)

Raは「算術平均粗さ」と呼ばれ、表面粗さパラメータの中でも最も一般的に使用される指標です。測定範囲内における表面凹凸の平均値を算出し、全体的な仕上がりを把握しやすいというメリットがあります。

このパラメータは大きな凹凸の影響をある程度緩和する傾向があるため、比較的安定した数値を得やすいとされています。そのため、製品設計者や検査担当者の間では、Raを基準にして許容値を定めるケースが多いです。

ただし、深い傷や突出した山などが一瞬だけ存在しているような場合、その影響はRaには大きく反映されないこともあります。そのため、Raだけではなく他の指標との併用が有効な場合もあります。

Rz(アールゼット)

Rzは「最大高さ粗さ」と呼ばれ、測定長さ内で得られた断面の最も高い凸部(Rp)と一番低い凹部(Rv)の高さを足した値として算出されます。

表面の最大凹凸をシンプルに把握できる指標で、突起や深い傷などの影響を直接反映するという特徴があります。

平均的な粗さを表すRaでは捉えにくい欠点を検出できるため、部品同士を組み合わせる際やシール性が求められる箇所ではRzが使われることが多くあります。一方で、局所的な異常に数値が左右されやすい側面もあるため、Raと合わせて指示するケースが一般的です。

RzJIS(アールゼットジス)

RzJIS(「十点平均粗さ」)は旧JISで定義されていたもので、Rzとは明確に区別されています。こちらは測定長さ内の最も高い山5つと最も低い谷5つの高さ差の平均を算出したもので、Rzとは意味も値も異なります。混同しやすいため、使用する規格を確認して評価することが重要です。

Ry(アールワイ)

Ryは「最大高さ粗さ」と呼ばれ、Rzと似通った性質を持っています。測定長さ内における最も高い山頂と最も深い谷底の高さ差を示すパラメータです。表面の「最大凹凸」を直接的に把握できるため、深い傷や突出部などの異常を検出する際に有効です。

Rzが平均的な凹凸を表すのに対し、Ryは単一の最大値を基準とするため、局所的な欠陥があると数値が大きく変動する傾向があります。そのため、Ryは外観品質や干渉防止、安全性確認など、「最悪ケース」を把握したい場合に重視されます。一方で、表面全体の平均的な仕上がりを評価するには適さないため、RaやRzと併せて評価するのが一般的です。

Rt(アールティー)

Rtは「全体の最大高さ粗さ」を示すパラメータで、測定範囲内における最も高い山と最も深い谷の高さ差を評価します。一度の測定で最も大きな凹凸を確認することができるため、最悪ケースを把握したい場合には有用です。

RzやRyと同様、局所的に大きな傷や突起があると数値は大きくなりやすいため、通常の面粗さ管理だけでなく、重大な欠陥を見逃さないためにも使われます。特に航空機や自動車部品など安全性が重視される分野では重視されることがあります。

ただし、平均的な仕上がりを評価するには向いておらず、表面の一部だけが極端に荒れている場合に過大評価となる可能性があります。そのため、総合的には他の指標と合わせて読み解く必要があります。

Rq(アールキュー)

Rqは「二乗平均平方根粗さ(RMS粗さ)」と呼ばれ、Raと同様に表面の平均的ななめらかさを示す指標ですが、高さの二乗平均を平方根して求めるため、Raよりも凹凸に対して敏感に反応します。

Raではあまり影響を受けない一部の粗大凸部や傷の存在が、Rqの値では顕著に反映されるケースがあります。厳密な滑らかさが必要な光学機器や高精度部品でRqを指標にする場合もあります。

ただし、数値の取り扱いがやや複雑になることもあり、一般的にはRaやRzの補助的な指標として活用されやすいです。測定機器によっては自動でRqを計算してくれるものも増えています。

表面粗さの表記における三角記号について

旧JIS規格では、表面粗さを三角形の記号で示す方法が主流でした。三角の数によって粗さ等級を段階的に指示できる仕組みで、職人が手加工で仕上げる時代には非常に実用的でした。

一方、現行のJIS規格(JIS B 0601:2013およびJIS B 0031:2014)ではこの三角記号を用いた表記は廃止されており、使用しないことされています。ただし、古い図面や一部の作業現場ではまだ使われているケースがあるため、知識として知っておくと役立つ場合があります。

もし新しい設計においてこの三角記号を用いる場合は、製造現場と仕様を十分に共有し、数値換算との対応関係を明確にしておく必要があります。誤解を防ぐためにも、最新のJIS規格と合わせて確認すると安心です。

三角記号 仕上げの程度(旧JISの意図) 現在のRa(算術平均粗さ)の目安 ~ 仕上げなし(加工の指示なし)
粗仕上げ(切断面など) Ra12.5μm ~ 25μm 程度
▽▽ 並仕上げ(切削面など) Ra3.2μm ~ 6.3μm 程度
▽▽▽ 上仕上げ(研削面など) Ra0.4μm ~ 1.6μm 程度
▽▽▽▽ 精密仕上げ(研磨面、鏡面など) Ra0.025μm ~ 0.2μm 程度

表面粗さの基準とJIS規格について

表面粗さを測定・評価するうえで欠かせないJIS規格や基準値について解説します。

日本国内で表面粗さを評価する際には、JIS B 0601が代表的な規格として広く参照されています。ここではさまざまなパラメータの定義や測定方法、評価基準などが定められており、国内外のやり取りでも重要な指針となります。

JIS規格を遵守することで、製造業者と発注者の間で共通の認識が形成しやすくなり、品質を安定的に確保することができます。とくに精密加工分野ではJIS B 0601の解釈をしっかり押さえることが、製品トラブルを回避する近道にもなります。

また、業種や用途によっては独自の社内基準や追加の規格を設けている場合や、前述の通り旧JIS規格を用いた表記が残っているケースもあるため、現行のJISだけでなく国際規格(ISO)や顧客の仕様書などとの整合性も確認することが大切です。

JIS B 0601に基づく粗さ等級

表面粗さの等級は、Raの値によっておおよそ以下のように分類されます。

  • Ra 0.025μm以下: 超精密研磨
  • Ra 0.1μm以下: 精密研磨
  • Ra 0.8μm以下: 精密研削
  • Ra 3.2μm以下: 一般研削
  • Ra 6.3μm以上: 切削

JIS B 0601は、表面粗さに関する日本の代表的規格で、Ra・Rzなどの粗さパラメータの定義や測定基準を定めています。旧来の粗さ等級では、一定の値域ごとにクラス分けを行い、三角記号などで表記していましたが、現在では具体的な数値を図面や仕様書に直接記載する方式が主流となっています。これにより、設計者やエンジニアが用途に応じて柔軟に粗さを設定できるようになりました。

品質保証の面では、JIS規格に基づいた測定機器や手順を用いたトレーサビリティ確保が重要視されています。正確な測定を行うためには、装置のキャリブレーション(校正)や測定環境の安定化が不可欠です。

Raの基準値と業界別目安

Raは最も一般的な指標で、業種ごとにおおまかな推奨値や許容範囲が設定されていることがあります。例えば、自動車部品だとRa0.8μm以下を求める箇所がある一方、一般的な機械部品ではRa3.2μm程度まで許容することも珍しくありません。

医療機器のように衛生面が重要視される分野では、表面が滑らかで汚れや微生物の付着しにくさが求められるため、より厳しい粗さ管理が行われます。逆に、工作機械のベッド面のように大きく摩擦を受けない部位では、比較的ゆるやかな基準が採用される場合もあります。

もちろん、これらの数値はあくまで目安であり、最終的には製品の設計要件や機能、コストとのバランスを踏まえて決定されます。実際の図面指定では、Ra以外のパラメータと併用しながら適切な指示を行うことが多いです。

区分 Raの目安(μm) 主な加工方法 主な使用箇所・製品 なめらかさが求められる理由
超精密研磨 0.025以下 鏡面研磨・ラッピング 半導体部品、光学レンズ、精密機械部品 高い清浄性・光学性能・寸法精度の確保
精密研磨 0.1以下 ポリッシング・超仕上げ 医療機器、精密軸受 清潔さと正確な動きが必要。汚れや菌が付着しにくいように。
精密研削 0.8以下 研削加工 自動車の重要部品(エンジン、駆動系など) 摩擦や摩耗を防ぎ、滑らかに動作させるため。
一般研削 3.2程度 フライス・旋削仕上げ 一般的な機械部品 コストと機能のバランスが良く、通常使用に十分な精度。
切削加工(粗仕上げ) 6.3程度 旋削・フライス粗加工 摩擦の少ない構造部、外装部品 見た目を重視しない箇所で加工手間を減らす。
一般構造部・鋳造品など 6.3~25 切削・鋳造面・溶接後加工 一般機械構造部材、筐体など 強度・外観を重視せず、加工コストを最小限に。

これらのRaの目安はあくまで一般的な指標です。実際の製品設計や品質管理では、数値の根拠や測定方法を理解したうえで適切に判断することが重要です。

表面粗さの測定原理や、Ra以外のパラメータの使い方についても知っておくと、より正確な評価や設計が可能になります。

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