表面粗さの基本と測定方法 粗さ計の原理をわかりやすく解説
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この記事は、「表面粗さそのものや粗さ計の仕組み・測り方を理解したい方」へおすすめです。
製品の性能や品質を左右する重要な要素の一つに「表面粗さ」があります。部品や製品の表面は一見滑らかに見えても、実際には微細な凹凸が存在しており、これが摩耗、摩擦、塗装の付着性などに影響を与えます。
本記事では、表面粗さの基本的な考え方や、実際にどのように測定されるのかをわかりやすく解説します。測定原理や測定方法を理解することで、製品の品質管理や設計の精度向上に役立ちます。初めての方でも理解しやすい内容で、粗さ計による測定の仕組みも丁寧に紹介します。
表面粗さとは
表面粗さとは、部品や材料の表面の凹凸の状態を数値化したものです。金属やプラスチックなどの材料を加工する際、どんなに滑らかに見える表面でも、ミクロのレベルで見るとわずかな凹凸が必ず存在します。この目に見えない微細な凹凸を数値化したものが表面粗さです。
この凹凸が大きいほど表面は粗く、小さいほど表面は滑らかです。表面粗さは、加工方法や切削条件、使用する工具などによって変化します。
表面粗さを把握することで、製造工程の品質管理や改良の余地を探ることができます。一般的には、滑らかな表面ほど耐摩耗性や疲労強度が向上し、製品の耐久性を高めやすくなります。逆に粗さが大きいと、摩擦が増すだけでなく、錆などの腐食リスクも高まる恐れがあります。
つまり、表面粗さは製品の性能や寿命に直接影響を与える重要なファクターです。適切に管理することで、トラブルを未然に防ぎ、信頼性の高いものづくりを実現できます。
表面粗さを測定する理由と使用場面
表面粗さを測定する最も大きな理由は、製品の機能や品質を管理するためです。これは、表面粗さが製品の性能に大きく影響するためです。適切な表面粗さでないと、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- 摩擦・摩耗の増大: 表面が粗いと、部品同士が接触した際の摩擦が大きくなり、摩耗が早く進みます。これにより、部品の寿命が短くなったり、エネルギー損失増加の原因となります。
- 気密性の低下: パッキンやシールを使用する部品など、気密性が必要な部分の表面が粗いと、隙間から液体や気体が漏れにつながります。
- 美観の低下: 自動車のボディや精密機器の外装など、美しさが求められる製品では、表面の滑らかさが重要です。
- 部品の組立不良: 凹凸が大きいと、部品同士がスムーズに組み合わなかったり、ガタつきの原因になったりします。
これらの問題を回避するために、自動車部品、電子機器、医療機器、航空宇宙産業など、さまざまな分野で表面粗さの測定が欠かせません。
表面粗さの原理と測定方法
ここからは、触針の先端を測定対象に接触させて部品の表面の状態を測定する「接触式表面粗さ計」について説明します。
接触式表面粗さ計の測定原理
接触式の表面粗さ計では、ダイヤモンド製の硬い触針が表面をなぞり、触針の上下変位を電気的な信号に変換して粗さを算出します。触針の先端は極めて細く、表面の微細な凹凸を追従していくため、比較的高精度での測定が可能です。
接触式表面粗さ計の利点・注意点
- 材質を選ばず金属からプラスチック、樹脂部品まで比較的幅広い材質に対応できます
- 表面が極めて柔軟な場合は、触針が凹んでしまい正確な測定が難しくなることがあります
- 触針が接触することで微小な傷をつける可能性があり、鏡面仕上げなどの高価値部品では事前に検討が必要です
- 比較的低コストで利用できます
接触式表面粗さ計の測定方法
接触式表面粗さ計の測定方法についても、ステップごとに説明していきましょう。
- 測定対象(部品の加工面)を固定し、安定した測定環境を整えます。
- 測定機器の触針を、対象面に静かに接触させます。
- 測定機器が触針を対象面上で一定速度になぞり走査し、触針先端の上下変位(変位量)を読み取ります。
- 取得した上下変位データから粗さ曲線が得られ、その曲線をもとに「算術平均粗さ(Ra)」「最大高さ(Rz)」などの指標を算出します。これらの指標で加工面の状態を定量評価します。
- 測定後、触針の状態(摩耗、圧痕発生の有無など)をチェックし、測定結果に影響がないか確認します。
表面粗さ・粗さ計についてのよくある質問
A:製品の用途や加工方法によって変わってくるため、適切な指標も異なります。
一般的には複数のパラメータを併用し、工程で最も重要な要素を優先して評価します。
A:測定対象・精度・コストに応じて選択が変わります。
接触式は汎用性が高く、比較的低コストで導入できるメリットがあります。
一方で非接触式は、表面を傷つけずに素早く測定できるメリットがあります。
A:日頃の校正や使用環境の維持が重要です。単に装置を導入するだけでなく、現場の運用体制もしっかり整備することが、最終的な品質向上につながります。
表面粗さの記号の見方や、JISにおける具体的な基準値については、別ページで詳しくまとめています。
より詳しく知りたい方など、ぜひあわせてご覧ください。
最後に、当社でレンタルできる機材をご紹介いたします。
表面粗さ計は高価な機器でもあり、導入にはそれなりのコストや維持管理が伴います。そこで、短期的・スポット的に使用するケースや、導入前の試験的な利用として、レンタルサービスを利用する企業が増えています。
レンタル可能な機器には、携帯型の接触式粗さ計や卓上型の高精度粗さ計など、用途や目的に応じてさまざまな種類があります。計測範囲や分解能も異なるため、自社の測定ニーズに合った機器を選ぶことが大切です。
