ガス検知器の仕組みと測定原理|吸引式・拡散式の違いと選び方も
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この記事では、ガス検知器の仕組みや測定原理について、わかりやすく網羅的に解説していきます。また吸引式や拡散式の違いなどもご説明しています。安全管理に重要な役割を担う「ガス検知器」。正しく理解して、正しく使用しましょう。
ガスセンサーの検知原理と特徴
早速ガスセンサーの検知原理とそれぞれの特徴について説明していきましょう。
接触燃焼式の原理
酸化触媒上で可燃性ガスが燃焼する際の発熱量を検知する方式です。
接触燃焼式の特徴
- センサからの出力は爆発下限界濃度(LEL)までガス濃度にほぼ比例。
- 使用環境温度・湿度の影響はほとんど受けない。
- 反応速度が速く、高い応答性
- 精度・再現性が高い
ニューセラミック式の原理
独自に開発された超微粒化酸化触媒(ニューセラミック)上で可燃性ガスが燃焼する際の発熱量を利用した検知方式です。
ニューセラミック式の特長
- ppm レベルから %LEL まで広範囲の検知が可能
- 温度・湿度の影響を受けにくい
- 従来の接触燃焼式と比較して耐被毒性に優れる
- 感度劣化が起こりにくく長期安定性が高い
半導体式の原理
金属酸化物半導体がガスと接触した際に生じる抵抗値の変化を検知します。
半導体式の特徴
- 低濃度域で高いセンサ出力
- 可燃性ガス以外にも多種類のガスの検知が可能
- 過酷環境に強く、耐久性が高い
熱線型半導体式の原理
酸化物半導体表面で起こる可燃性ガスの吸着および酸化反応に伴う電気伝導度の変化を検出します。
熱線型半導体式の特徴
- 低濃度可燃性ガスの検出に適した高感度方式
- ガス選択性のあるセンサが多数あり用途が広い
- 小型・省電力で起動が早い
加熱された素子にガスが触れた際、生じるガス固有の熱伝導率の違いを利用する方式です。
熱伝導式の特徴
- 100 vol% レベルまで濃度に比例した出力
- 触媒劣化がなく長期安定性が高い
- 高濃度アルゴン・窒素・CO? など不燃性ガスの検知が可能
定電位電解式の原理
一定電位に保たれた電極上でガスを電気分解し、その際の電流値をガス濃度として検知します。
定電位電解式の特徴
- 毒性ガスを高感度に検知
- 設定電位により検知対象ガスを選択可能
- 工場・研究施設や点検業務で広く採用
隔膜ガルバニ電池式の原理
電極上で酸素が電気分解されるときの電流を、酸素濃度として検知します。
隔膜ガルバニ電池式の特徴
- 外部電源不要(自発電)
- 100 vol% まで濃度に比例した出力
- 小型・軽量化に適し、携帯型機器に広く利用
赤外線式(NDIR)の原理
赤外線光源から放射された光がガスによって吸収される量を検知する方式です。
赤外線式(NDIR)の特徴
- 高精度・高安定性
- 感度劣化が少なく長寿命
- 共存ガスや水蒸気の影響が小さく、ガス選択性が高い
ガスセンサー区分と検知対象ガス
ガスセンサ区分ごとに検知可能なガスが異なります。表にまとめましたので、こちらも参考にしてみてください。
ガス検知器の採取方式
ガス検知器にはセンサーの測定原理の違いだけではなく、採取方法(どのようにガスを取り込むか)の違いも重要です。最も一般的な「拡散式」「吸引式(ポンプ式)」の違いについて解説していきます。
拡散式とは
拡散式とは、測定器(ガスセンサ)の周辺のガスを自然拡散で取り込み、周辺の濃度のみを計測する方式のことを指します。
吸引式とは
吸引式(ポンプ式)とは、導入管(ガスを吸引する為の管)を用いてポンプを使い、ガスを吸引して測定を行う方式です。 拡散式とは違い導入管を用いてポンプでガスを吸い上げて測定する為、 拡散式よりも多少検知速度が遅くなりますが、マンホール内など離れた場所の測定に適しています。
拡散式・吸引式の違いと使い分け
拡散式と吸引式は、それぞれでできることや得意とすることが違います。 そのため、拡散式か吸引式を選ぶ時には「作業環境」で選ぶのが一つのポイントです。
拡散式が適した作業環境
- 作業者周囲のガス状況をリアルタイムで監視
- 酸素濃度管理・作業中の安全確保に最適
- 石油精製、製鉄、プラント、建築・土木現場などで広く利用
吸引式(ポンプ式)が適した作業環境
- 導入管を下ろしてマンホール・ピット・タンクなど離れた場所を測定可能
- 作業前のガス漏洩確認に最適(可燃性ガス・毒性ガスなど)
- 人が入る前の安全確認に必須とされる現場で用いられる
ガス検知器は、有害ガスや酸欠事故を防ぐために欠かすことのできない、文字通り“命を守る”重要な安全機器です。一方で、ガスセンサーには劣化や寿命があり、定期校正や消耗品交換など、維持管理には一定のコストと手間がかかります。
そのため、必要な期間だけ確実に校正済みの機器を使用できる 「レンタル」という運用方法を選ぶ現場も増えています。
用途や期間に応じて柔軟に利用できるため、経済性と安全性の両立に役立つ選択肢です。
ご利用環境に応じて最適な機種をご提案することも可能ですので、ぜひレンタルという方法もご検討ください。
