pH計とは?測定原理や失敗しない使い方、各業界の基準についても解説!
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- pHとは
- pH計の役割は?
- pH計の測定原理
- pH計の基本的な使い方
- pH計を失敗せず使うために注意したいこと
- 各業界におけるpHの基準値について
pHは水溶液の酸性・アルカリ性を示す重要な指標であり、水質管理、食品、工業など多岐にわたる分野での正確な測定が欠かせません。酸性度やアルカリ度のバランスが崩れると、製品や環境、人体に影響を及ぼす可能性があるため、pH計を活用した管理は非常に重要です。このpHを正確に測定するために不可欠なのが「pH計」です。
しかし、pH値に対してなんとなく理解はあっても、pH計の測定原理や基準値の根拠を正確に知っている方は、決して多くないでしょう。どのように測定し、どのようなタイミングで活用すればよいのかを整理しておくことで、様々な場面で混乱を避けることができます。
本記事では、pHの基礎からpH計の使い方、各業界での具体的な基準の解説、さらに導入コストを抑えるためのレンタルpH計の情報まで、幅広くご紹介します。初心者の方でもわかりやすい言葉でまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
pHとは
pHとは、水溶液中の水素イオン濃度をもとに、酸性・中性・アルカリ性の性質を0~14の数値で表した指標です。pH値が7より低いと酸性、7より高いとアルカリ性、ちょうど7が中性を意味します。
この数値は対数スケールで構成されており、pHが1変化するだけで水素イオン濃度は10倍変わるため、わずかなpHの違いが液体の性質に大きく影響します。
<pHの具体例>

- レモン汁:pH2前後(強い酸性)
- 水道水:pH7前後(中性)
- 石けん水:pH10前後(アルカリ性)
pHは日常生活だけでなく、飲料水の管理、食品の品質保持、化学反応の制御、工業プロセスの最適化など、さまざまな分野で活用されています。たとえば、食品の発酵や防腐効果、工場での製品精度などに大きな影響を与えるため、pHの管理は非常に重要です。
pH計の役割は?
pH計の役割は、このpH値を客観的かつ正確に測定することです。リトマス試験紙のように色でおおよその酸性・アルカリ性を判断する方法もありますが、pH計を使えば小数点以下の精密な数値で測定できます。
これにより、以下のような目的で重要な役割を果たしています。
- 品質管理: 飲料水や食品、化粧品などが一定の品質基準を満たしているかを確認する。
- 環境監視: 河川や工場の排水が環境基準を満たしているかを監視する。
- 農業: 作物の生育に最適な土壌のpHを管理する。
- 研究開発: 化学反応や微生物の培養など、精密なpH管理が求められる実験を行う。
また、近年では簡易的なペンタイプやポケットサイズのpH計が普及し、家庭菜園や小規模食品生産など一般ユーザーにも広く利用されるようになりました。必要性や使用頻度に合わせて、適切なタイプを選択することが大切です。
pH計の測定原理
pH計は主に電気化学的な手法で酸性度・アルカリ性を測定します。その仕組みをわかりやすく解説します。
一般的なpH計の中心にはガラス電極と比較電極があります。測定は、ガラス電極法という原理に基づいています。
- 起電力の発生:pHに応答する特殊なガラス膜を持つ「ガラス電極」を測定対象の溶液に浸すと、ガラス膜の内側と外側(接している溶液)の水素イオン濃度の差によって、ごくわずかな電位差(電圧)が発生します。
- 電位差の検出:このとき発生する電位は、比較電極(常に一定の電位を保つ)との差として検出されます。
- pH値への変換:pH計本体は、このガラス電極と比較電極の間の電位差を読み取ります。pHが1変化すると、特定の電位差(25℃で約59.16mV)が生じるという関係性(ネルンストの式に基づく)を利用し、測定された電位差をpH値に変換して表示します。
pH計は、溶液の中の酸性・アルカリ性の強さに応じて変化する電圧を測り、その値をpHという形で数字にしてくれるのです。
測定には温度補償も不可欠です。水溶液の温度が変わると水素イオンの活動度も変化するため、正確を期すには自動温度補正機能を用いたり、手動で測定温度に合わせて補正を行ったりします。近年は自動温度補正付きのpH計が多く普及し、より簡便に扱えるようになりました。
この電気化学的な手法のメリットは、非常に小さなpH変化も捉えられる点です。食品の発酵管理や、メッキ工場の液管理などでは、pHの微妙な違いが最終製品の品質に直結するため、高精度なpH計が重宝されます。
pH計の基本的な使い方
pH計を正しく使いこなすためには、特に「校正」作業が重要です。ここでは、一般的なポータブルpH計の使い方を4つのステップで解説します。
- 電極を保護キャップから取り出し、純水(または蒸留水)で先端を十分に洗浄します。
- pH値が正確な「標準液(バッファー)」を準備します。pH7(中性)と、測定したい値に近いpH4(酸性)またはpH9・10(アルカリ性)の2~3種類を用意するのが一般的です。
- pH計を校正モードに設定します。
- まずpH7(中性)の標準液に電極を浸し、数値が安定したら測定値を確定させます。
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電極を純水で洗浄し、次にpH4(酸性)またはpH10(アルカリ性)の標準液に浸して同様に測定値を確定させます。
- これにより、pH計の示す値が正しい基準に合うように調整されます。測定前には必ず行いましょう。
- 校正が完了したら、電極を純水で十分に洗浄し、ティッシュペーパーなどで軽く水分を拭き取ります。
- 測定したいサンプル(溶液)に電極の先端を浸します。
- pH計の表示値が安定するのを待ち、安定したところで数値を読み取ります。
- 測定後は、電極を純水でしっかり洗浄します。
- 電極の保護キャップに専用の保存液(3mol/L 塩化カリウム溶液など)を入れ、電極が乾燥しないようにキャップをしっかり閉めて保管します。電極の乾燥は故障の最大の原因です。
pH計を失敗せず使うために注意したいこと
基本的な使い方に加えて、いくつかの点に注意することで、より正確な測定が可能になり、pH計の寿命を延ばすことにも繋がります。
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温度補償を忘れずに
pHの測定値は温度によって変化します。多くのpH計には温度センサが内蔵されており、温度変化を自動で補正してくれますが、この機能(ATC:自動温度補償)が正しく設定されているか確認しましょう。より高精度な測定には、標準液とサンプルの温度をできるだけ近づけておくことが理想です。 -
電極の取り扱いは丁寧に
pH計の先端にあるガラス電極は非常にデリケートです。衝撃を与えたり、硬いものでこすったりしないよう、慎重に取り扱いましょう。洗浄の際も、強くこすらず流水で洗い流すのが基本です。 -
異なるサンプルの測定
酸性のサンプルの次にアルカリ性のサンプルを測定するなど、性質が大きく異なるものを続けて測定する場合は、電極の洗浄を特に念入りに行い、前のサンプルの影響(クロスコンタミネーション)を防ぎましょう。 -
校正はこまめに
高精度な測定を維持するためには、定期的な校正を行うのが理想です。また、長期間使用しなかった場合や、前回とは大きく異なる性質のサンプルを測定する場合も、必ず校正を行ってください。 -
標準液・保存液の管理
開封済みの標準液は、空気中の二酸化炭素を吸収してpH値が変化することがあります。長期間放置せず、新しいものを使いましょう。また、電極の保存液が減ったり汚れたりしたら、交換・補充してください。
各業界におけるpHの基準値について
実際にpHがどのように基準値として設定されているのか、各業界の基準を見ていきます。
pHは多様な業界でそれぞれの安全性や品質管理の基準として重要視されています。ここでは代表的な水質基準から食品業界、工業プロセスまで、どのようなpH値が目標や制限として設けられているのかに注目します。
とくに飲食品や医薬品、公共の水道水など、人の健康や環境に直接関わる分野では、国や地域の法令による詳細な規制値が細かく定められています。排水基準でも、特定のpH範囲に収まらない場合は排出が認められない場合があります。
また、土壌や農業ではpHは植物の生育を左右する重大なファクターです。メッキや製造工程など工業分野では、プロセスの精度を維持するためpHモニタリングが欠かせません。以下で各業界におけるpH基準をさらに詳しく見ていきましょう。
水質基準(環境基準・排水基準)におけるpH
河川や海などの公共用水域の環境を守るため、法律でpHの基準が定められています。
水質基準は自然環境や生活環境を保護するための重要な指標であり、常に適正な管理を行うには精度の高いpH計測が不可欠となります。
- 環境基準(河川):生活環境の保全に関する環境基準として、多くの河川では pH 6.5以上8.5以下と定められています。これは、多くの水生生物が健全に生息できる範囲の目安です。
- 排水基準(工場など):水質汚濁防止法に基づき、工場や事業所が公共用水域へ水を排出する際の基準が定められています。海域以外の公共用水域へ排出する場合は pH 5.8以上8.6以下、海域へ排出する場合は pH 5.0以上9.0以下です。
飲料水(上水)におけるpH
私たちが毎日飲む水道水も、水道法によって水質基準が厳しく定められています。これは人が飲用しても健康上問題がないようにするための基準として設定されています。
- 水道水質基準:pH 5.8以上8.6以下であることが求められます。これは、水道管の腐食を防いだり、水の味や消毒効果に影響を与えないための重要な基準です。
pHが酸性側に寄りすぎると腐食のリスクが高まり、管材質の劣化などのトラブルが起きやすくなります。逆にアルカリ性が強すぎると、味わいが悪くなるほか、ボイラーなどの設備にスケールが付着しやすくなります。
こうした理由から、上水ではpHを中性付近に保ちながら、安全でおいしく飲める水を供給するための管理体制が整えられています。
食品業界におけるpH
食品の製造・加工において、pH管理は味や色、保存性を左右する重要な要素です。ヨーグルトやチーズなどの発酵食品では、適切なpH帯を維持することで風味や品質を安定させることができます。
一方で、pHが高い環境では微生物の繁殖が活発となり、食中毒のリスクが高まる場合があります。低pH(酸性寄り)に保つことで、微生物の増殖を抑制し、食品の安全性を確保できる側面もあります。
- 清涼飲料水:食品衛生法で成分規格が定められており、例えば炭酸を含まないものは酸性(pHが低い)側、ミネラルウォーター類はpH 5.8~8.6の範囲とされています。
- 低酸性食品の加熱殺菌:pHが4.6を超える食品(低酸性食品)は、ボツリヌス菌など食中毒の原因菌が増殖しやすいため、特定の加熱殺菌基準が設けられています。pHの測定は、この基準を適用するかどうかの判断に不可欠です。
- ジャム類:ペクチンのゲル化(ゼリー化)には適切なpH(一般的に2.8~3.5程度)が必要で、品質を安定させるためにpHが管理されます。
土壌や農業におけるpH
土壌pHは農作物の生育環境を左右する重要な要素です。一般に作物の種類によって好ましいpH帯は異なり、野菜類など多くはpH6.0~7.0程度を好む場合が多いとされています。
pHが大きく外れると、土壌中の肥料成分が吸収されにくくなり、生育不良や収量低下につながることがあります。逆に、適切なpH環境を維持すれば、作物の健全な成長と高い品質を実現しやすくなります。
そのため、農家や園芸愛好家はph計を用いて定期的に土壌の酸度を測定し、不足する成分の補給や石灰などの施用によってpH調整を行うのです。
工業用途(メッキ等)におけるpH
工業分野でもpHは製品の品質を左右する重要な管理項目ですが、その基準は用途や目的によって大きく異なります。
- 金属メッキ:メッキ液のpHは、メッキ皮膜の光沢、均一性、硬さなどの品質に直接影響します。しかし、各メッキ液の種類によって最適なpH範囲は異なり、業界全体で統一された一般的な基準値は存在しません。そのため、各メッキ液の種類ごとに定められた非常に厳密なpH範囲を維持する必要があり、製造ラインでは連続的な監視が行われることも珍しくありません。
- 製紙業:パルプの漂白工程や、紙の強度・耐久性を決める工程でpHが管理されます。
- 化学プラント:化学反応を効率的に進めたり、目的の化合物を生成したりするために、反応槽内のpHを厳密にコントロールします。
pH基準まとめ
各業界で求められるpH基準は、目的や安全性、品質基準によって異なりますが、いずれもpH計を用いた継続的なモニタリングと適切な調整が必要という点は共通です。
特に水質や食品のように人体や環境への影響が大きい分野では、法令やガイドラインに従って厳密な管理が行われています。一方で工業分野などでは生産効率や品質維持の観点から、狭いpH範囲を厳密にコントロールする必要があります。
いずれの業界でも、最新の基準や技術情報をキャッチアップしながら、測定機器や測定手法のアップデートを図ることが欠かせません。
分野 | 対象 | ph基準値 | 目的 |
---|---|---|---|
水質 | 環境基準(河川) | pH 6.5以上8.5以下 | 水生生物が健全に生息できる範囲の目安 |
飲料水 | 水道水質基準 | pH 5.8以上8.6以下 | 水道管の腐食防止、水の味や消毒効果に影響を与えない範囲 |
食品の製造・加工 | ミネラルウォーター類 | pH 5.8~8.6 | 微生物の増殖を抑制し、食品の安全性を確保 |
農業 | 野菜類など | pH6.0~7.0 | 作物の健全な成長と高い品質を実現しやすくなる |
※上記は代表的な値であり、対象や条件によって基準値は異なります。
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