JFEアドバンテックの新型濁度計ATU-75W-USBについてのテクニカルレポートです。

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新型 中・高濃度濁度計テクニカル・レポート(ATU-75W-USB)

ATU-75W-USB

JFEアドバンテック株式会社より2008年度春より発売された中・高濃度濁度計「ATU-75W-USB」のテクニカル・レポートです。

文章・写真:横山勝英(首都大学東京 准教授)
資料提供:JFEアドバンテック株式会社


小型メモリークロロフィル濁度計 COMPACT-CLWはこちら

土砂計測が必要なあらゆるシーンに対応

土砂計測が必要なあらゆるシーンに対応

計測器に必要な性能は精度について言えば、理論上のセンサー精度が高くても現地において質の高いデータを取得できるとは限らない。特に濁度計においていはその傾向が顕著である。

濁度計は土砂濃度を光の散乱強度によって間接的に計測するわけだが、土砂は溶解性の物質ではないから、粒径がおおきくなるほど水中での均質性が低くなりやすい。そのため、光学センサーは土砂粒子の自由な浮遊運動を妨げない形状をしていなければならない。

より現実的な問題としては、土石流や洪水流などの重要な土砂移動現象を計測する際に、流木や落ち葉などの影響を受けにくい、衝撃や摩擦への耐性が高い、高濃度状況を計測できる、といった性能が必要である。

こうした供給にATU75W-USBは応えている。 小型ゾンデの正面にフラットなセンサー面が配置されているため、流れを乱しにくい。また光学センサーが突出していないので、本体が高強度のチタン製であることも考慮すると、洪水や波浪などの大きな外力に対しても安心である。さらにワイパー機能でゴミを除去できる。

しかし、これらの特徴は2002年に販売が開始されたCOMPACT-CLW(クロロフィル・濁度計)において既に実現されている。ATU75W-USBの新しい点とは、土砂濃度計測が必要なあらゆるシーンに対応したということだろう。

センサー構成として、2つの濁度(ホルマジン1,000FTU、カオリン100,000ppm)、水位、水温となっている。COMPACT-CLWからChl蛍光センサーを外して、超高濃度の濁度センサーと水深センサーを追加している。

土砂動態を計測するという目的においてChl濃度を必要しない場合は多い。その代わりにこれまで計測不能であった超高濁度域のセンサーを追加することで、土砂流などの激甚災害、航路を埋設させるFluid Mud、揚子江などの海外の濁流河川を対象とできるようになった。

また、洪水、貯水池の排砂、河口域の高濁度水塊、沿岸漂砂、赤土流出などの諸現象は水域の水位(潮位)変動と連動して発生するため、水深を同時に計測できる利点は非常に大きい。公的な水位観測所が無い場所でも1台で水と土砂の流出状況を計測できるようになったといえる。


現地でのデータ取得状況

現地でのデータ取得状況

ATU75W-USBを現場(感潮河道)でテストした。左は洪水時にCOMPACT-CLWと抱き合わせで計測した例である。洪水による水位の増減や潮汐変動が捉えられており、同地点の水位観測所データと一致している。

濁度は高濃度と中濃度、およびCLWを比較すると波形の相似性がよい。つまり実績のあるCLWと同等の反応をしめすことがわかる。

なお、ATU75W(中濃度)とCLWは標準でホルマジン検定であるが、左上図では特別にカオリン検定機を使っている。3センサーともカオリン粘土で検定しているのに濁度値が異なるのは、現地底泥の粒径や形状、色調がカオリン粘土と異なるためである。

この点については後ほど検証を行うこととするが、とにかくATU75W-USBでは安定した土砂濃度計測が可能である。

では、CLWでは計測できない超高濃度域はどのであるかということで、感潮河道の高濁度水塊を計測してみた(左下図)。こちらは濁度をSSに換算して示している。

上げ潮と下げ潮で濁度が急上昇し、流れが停滞する干潮と満潮で濃度が低下するのだが、従来の中濃度センサーでは3,000mg/lが限界である。一方、新型の高濃度センサーではその上まで計測できている。

土砂濃度の計測限界

土砂濃度の計測限界

新たに加わった高濃度用のセンサーは土砂濃度(SS)の計測レンジが公称10万ppmとなっているが、実際、どの程度まで計測できるのだろうか。

河口域の濁度を濃縮して超高濃度溶液を調製し、ATU75Wの反応を調べた結果が右図である。中濃度センサーは前述の通り3,000mg/l程度で反応が頭打ちになっているが、高濃度センサーでは、約60,000mg/lまで反応している。6万mg/lにもなると濁水というより水分の多い「泥」に近い状態である。

一方、中濃度センサーはCLWと同じ構造であるから、これまでの実績からしてきれいな水(数mg/l程度)に対しても値の信頼性は高いと考えてよい。 つまり、本機は数mg/lの清水から数万mg/lの泥水までデータが取得できるわけであり、計測範囲が無限の域に達していると言っても過言ではないだろう。


土砂の性状が濁度反応に及ぼす影響

土砂の性状が濁度反応に及ぼす影響

ところで、ATU75Wは中濃度がホルマジン検定、高濃度がカオリン検定となっており、一つの機械で異なる濁度検定が行われている。

通常、濁度検定には工業用であるホルマジン溶液が使用されているが、作り出せる濃度に限界があり、信頼できる検定範囲は1000FTUまでとのことである。そのため、より高濃度の検定を行うには昔ながらのカオリン粘土を使用せざるを得ないという事情がある。

濁度計のやっかいなところは、検定に使用した粒子と同じ粒子でなければ濁度反応が異なる点にある。つまり、川や海などの現場で濁度を計測しても表示される値(FTU、ppm)がそのまま土砂濃度(mg/l)にはならない。浮遊粒子からの光散乱強度を計測しているため、粒子の粒径や形状などが異なれば光の反射特性も変化してしまうことが理由である。 たとえば同じ現場で濁度と底沼を採取し、それぞれを濃縮・希釈して濁水を調製しても、濁度値は図のように異なる。濁水の方が粒子がわずかに細かいため、同じSS濃度であっても単位体積中の粒子数が多くなることから、大きな光散乱強度が得られる。

現地水の濁度を計測しても実際のSS濃度よりもかなり低い値が出るのも(上と左図)現地粒子がカオリン粘土よりも粗いためである。ホルマジンとカオリンも性状が異なるから、各センサーは現地粒子に対する反応が違う。


要するに濁度は水温などとは異なり絶対的な値ではなく、あくまでも土砂濃度の目約であるから、これを使用する際には現地で濁度を採取して独自の検定曲線を作成し、濁度値を土砂濃度に換算する必要がある。

現場ごとに検定曲線を作成するのは面倒ではあるが、いったん作ってしまえばあとはATU75Wにより自動的に土砂濃度の変化を知ることができる。


現場での使いやすさ

現場での使いやすさ

高機能・耐水性の携帯電話やデジタルカメラが日常で安く使えるのに、最先端の計測器は携帯やデジカメが存在しない時代の設計から大して進歩していない。このように思っているユーザーは多いだろうし、携帯世代の大学生にとっては??である。

ATU75W-USBの発売によりようやく「普通」に使える計測器を手にすることができた。 のあ、JFEアドバンテックの名誉のために言えば、計測器分野では先端的である。

まず、データがUSB通信とSDカードにより回収できるようになった。従来のRS-232C通信ではデータ回収に数十分かかっていた場面でも、USB通信なら数十秒であり、現場でのメンテナンス時間が格段に短縮される

SDカードの場合は、事前に設定ファイルを書き込んでおけば、現場で挿入するだけで自動的に計測が始まる機能があり、パソコンの持ち込みが困難な場所や多数の本機を短時間で設定したい場合に便利である。

電源には市販用のカメラ電池(CR-V3)が採用された。専用電池でなくなったので家電量販店で気楽に入手できるし、ランニングコストもかなり抑えられる。計測を知らせるブザー機能もあり、動いているかどうかが簡単に分かる。ソフトウェアも大幅に改良されて、工夫が随所に見られる。

このように(計測器にしては)革新的なアイデアが盛り込まれ、格段に使いやすくなった。しかも、計測可能時間や大きさはほとんど犠牲になっていない。

こうした使いやすさは現場で熱心に測定を行っている調査担当者を様々な苦労から解放し、これまで以上に高品質なデータが取得できるようになるだろう。

ATU75W-USBは現地用の計測器にとって最も重要な性能と言うべき「使いやすさ」においてもトップレベルと言えよう。


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